2019年2月「父」

1月に父が新年会に行きました。ご機嫌で帰ってきたのですが夜ベッドから落ちたらしく、腰の辺りが痛くて動けなくなってしまいました。自力でトイレには行けるけど、それ以外はずっと寝ている状態です。横になりながら、おにぎりを食べていました。

 

とは言え、父は寒くても暑くても毎日散歩をしていたこともあり、日に日に良くなり、トイレまでスタスタと歩いています。トイレには行くし、ベッドのところで座っていることは出来るようになりました。が・・・

「リビングまでは行けない。ご飯をベッドまで運んで欲しい!」との要求が続きました。足の弱い母がせっせと運んでいました。もちろん私も色々手伝います。全てにおいて自立していた父がこうなってしまうと、買い物や洗濯などの家事を一気に私がやらなくてはいけません。今まで父が元気でいてくれたのだから、それに感謝して、これからは私がやらなくてはいけない。そんなことは重々承知しています。わかってはいますがどうしても心からやってあげよう!という気持ちにはなれないのです。父は父でどうして優しくしてくれないんだー!とイライラしている様子です。

極めつけはお昼時(一番忙しい時間)に父から「家の近くの肉屋でチャーシューを買ってきてくれ!休憩時間もらえば買いに行けるだろう」と電話がありました。これには私の怒りが沸騰!!「は~?何で?今日なの?休みの日じゃだめなの?」と文句を言いつつ、夕方早めに帰って買いに行く私・・・

離れている兄に今の状況を言っても仕方ないと思っていたのですが、同じ兄弟なのに、どうして私だけこんなことさせられているの~?と今まで抱えていた怒りが出てきました。兄に電話すると「わかった!様子見にいくよ」と言っていました。

 

そんな日が続いていたある日、卒園児のYさんから悩みを相談されました。

「ここ最近、上の子(高校生)が荒れていてひどいんです。例えば洗濯物に洗濯ハサミが付いていたので『これくらい取っておいてよ。』と言っただけなのに『何で私にはそうやって言うの?妹や弟にだって手伝わせればいいじゃん!』ともの凄い剣幕で怒り出すし・・・朝は目覚まし時計で起きないから『早く止めてよ!』と私が言って起こすと逆切れして怒り出すし・・・もうどうしていいかわからない。」と涙目です。

私は「あ~やっぱり・・・いつかこんな日が来ると思っていた。だって妹や弟の話をするときのYさんは、大変!大変!と言いつつ楽しそうだったもん。お姉ちゃんの時の悩みは本当に嫌そうで辛そうだったから・・・明らかに下の子二人のことは信じているし、かわいい!というオーラが出ていたからね~。お姉ちゃんが今抱っこして欲しいって言っているんだから抱っこするしかないよ!本当はずっと妹や弟のことをずるい!って思っていたのかもしれないから今はお姉ちゃんだけ可愛がるしかないよ」と伝えました。「そうですよね~そうですよね~」と頷いて帰って行きました。その夜コンビニでお姉ちゃんの好きなタピオカミルクティーを買って渡したそうです。すると次の日の朝はご機嫌で起きてきたそうです。高校生になると抱っこは出来ないから、何らかの形で「大事だよ!かわいいよ!大好きだよ!」と伝えることしかないと思っています。

 

そして・・・その夜家に帰ると「今日お兄ちゃん来たよ。ゆうこに病院連れて行ってもらった方がいいって言われたから金曜日連れて行ってよな~」とあっさり父と母が言いました。

「は―――――?何言っているの?私の予定はどうするの?何で勝手に決めているの?もうスタスタ歩いているじゃん!どうして私が行くの?全部今までやってきたの私だよねー!?」もうこれは怒りを止められない!そんな中、二人はテレビを見て演歌を聞いています。私はテレビを消して仁王立ちです!

「だいたいさ~お父さんは小さい時には銀河鉄道999の映画に行く時、私を置いてお兄ちゃんと二人で行ったよねー!(その後私が悔しくて大泣きして、後日父と買い物に連れて行ってもらったけど、私が泣かなかったら連れて行かなかっただろうし、仕方なく行くってオーラは感じていた)

あと、お兄ちゃんにローラースケートを買った次の日に、スケートボード買ったよねー!ローラースケートは転んで頭を打ったら痛いからって理由でスケートボード買ったんだけど2日間で3万も4万も買ってあげたよねー!(その時私は怒りも悲しみもなくただ笑って過ごしていた)

と・・・35年以上も前の話をまるで最近起こったことかのように、80代の父に向って叫び始めました。

「何言っているんだ・・昔のこと・・・もう忘れた」

と言ったので「親はみんなそういうんだよ!子どもだけなんだよ!覚えているのはー!私もお兄ちゃんみたいにかわいがって欲しかった。」と生まれて初めて言いました。

次の日もまたごちゃごちゃもめたので「お母さんには優しくしてもらったから優しく出来るけどお父さんには心から優しく出来ません。ごめんね。」と伝えました。

 

その週の日曜日、母が教えてくれました。父が「今更言われてもな~」と気にしていたそうです。母は「一回くらい言ってやった方がいいんだ!」とこれまたあっさり笑っています。

 

こんな出来事をスタッフに話すと「あらら~じいちゃんかわいそうに・・・」「ゆうこさんそこまで言わなくても~」「でもずっと思っていたことだからね~言ってよかったのかもね」「ゆうこさんみたいに言えればいいけどそれが普通の人は言えないんだよ。みんな何かしら不満を持っていても大人という仮面を付けて諦めて過ごしているんだよ」などなどの意見がありました。

 

11月から入園するももちゃんママと親子関係の話になり、父との話をしました。すると「それって愛の告白ですね~!」と言っていました。そう!そう!そうかもしれないです。私のことを兄よりいっぱいかわいがって欲しかった!ってことを赤裸々に伝えたことになるのですから・・・

今まで二人の関係を川の流れに例えたとしたら、何十年もかけて出来た大きな岩(わだかまり)がドーンとあって、その岩が今回のことによってすーっと流れた感覚です。あれからお互い特別なことは何もないけど父の言動も気にならなくなり許し合って認め合えるようになった・・・そんな感じです。

 

その後のYさんといえば・・・「3人共平等に可愛がります!」と言っていたので「えーっ!それは平等じゃないよ!今までの分も考えたら、これからしばらくは上の子だけ可愛がってくれないと平等じゃないからね~!」と伝えました。「あっ!そうですね~」と笑って帰って行きました。

それからはYさんと長女の関係は、びっくりするほど変化して、朝のバトルも度々起こっていたケンカも今は一気に少なくなったそうです。しかも長女の成績まで伸びたそうです。ここでも私と同じようにYさんと長女の間に流れる川があるとしたら、数年かけて出来た小さな岩(わだかまり)があってその岩がすーっと流れた感覚なのかもしれません。

 

この前しょう君ママと話をした時、NHKのテレビ「プロフェッショナル友田明美さんの子どもの脳を傷つける親たち」の話題になりました。テレビも観てショックを受けたのですが、本の内容もとてもショック内容でした。(今、本の内容をまとめています。今年度までに読んでもらえたらと思っています。)

 

内容の一部を書いてみます。

『不適切な養育(マルトリートメント)のよって極度のストレスを感じると、子どものデリケートな脳は、その苦しみになんとか適応しようとして、自ら変形してしまうのです。生き延びるための防衛反応だともいえます。それは悲しくそして驚くべき事実です。脳の機能にも影響がおよび、子どもの正常な発達が損なわれ、生涯にわたって影響をおよぼしていきます。大人が理由もなく子どもを殴るのは明確な虐待だとわかっていても「殴り方を加減すれば虐待ではないはず」「子どもの行為を正しくするために、やむなく殴るのだ」「一度きりなら許されるだろう」という理由で、子どもに暴力をふるうケースが少なくありません。目を向けるべき、不適切な行為の強弱ではなく、そのときの子どものこころの状態です。子どもが大人に殴られるということは、わたしたち大人が、レスラーのような強靭な相手に殴られるようなものです。仮に大人のほうでは手加減しているつもりでも子どもは「もしかしたら殺されるかもしれない」といった恐怖に襲われ、たとえ身体に傷が残らなくても、恐ろしいという感情が子どものこころに残っていきます。』

 

ほんの一部ですが・・・これを読んだだけでもショックを受ける方も少なくないと思います。私も一気に卒園児の顔が浮かびます。特に最初に受け持ったあの子達(成人してます)・・・怒っていたし・・・イラついていたし・・・自分が正しい!と強く思っていたし・・・あ~今頃どう思っているんだろう?忘れてくれているといいな~?楽しかった思い出だけ残ってくれていたらいいな~?大丈夫かな~?と反省モードに入りました。

著者である友田先生も我が子のこともマルトリートメントしてしまった時期があり子どもが成人した今も深く反省している。と書いてありました。そして『子どもは許すことにおいて、天才です。』という言葉も書いてありました。

 

そう!だから大丈夫でしょう!許してくれているはず!水に流してもらおう!そして今は在園児と仲良く過ごしていこう!と思っています!